対人援助を考える。

対人援助の仕事を通じて考えたことの備忘録です。

学会参加記録(2)

最終日(10月6日)の午後は、盗癖と性的問題行動に関するセッションに参加。難しいケースに果敢に挑んでいることが分かる実践発表でした。フロアから、医療費の点数に関する質問がありましたが、確かに、「よし、自分たちもやろう!」と思っても、病院の経営的な視点からは、簡単に始められないのだろうと思いました。発表されたクリニックの志の高さが素晴らしいです。
このセッションでは、条件反射制御法についても紹介がありました。今まで何度か研修に参加したこともありますが、賛否両論なやり方であり、今は実施していません。ふと思ったのは、今回のような伝統ある学会で、実践例を報告して議論した方が良いのでは、ということです。そうやって技法や理論を精査していくことで、誤解を解くことができるでしょうし、効果の有無や作用機序を明らかにしていくことも重要ではないかと思いました。
それはさておき、今回の発表を聞いて、第一信号系と第二信号系という考え方は有用と感じました。条件反射制御法の手続きや、欲求そのものを消失・低下させるという方向性が批判の的になっているところですが、極度の疲労やストレスといった状況では、第一信号系(動物的な脳など)が優位になりやすい、欲求の対象に近い場面では、あえて第二信号系(人間的な脳)が優位になるよう、メールを書くといった対処をする、といった説明には、納得させられました。確かに、強い疲労を感じている時は、本能的な行動に及びやすいことは、誰しも実感しているところでしょう。クライアントが、自らの問題行動は第一信号系によるものと理解しておくと、意思の弱さを嘆くのではなく、戦略的に対応しようという動機付けが高まるかもしれません。第一信号系が優位になる場面を避ける、という対処方法は、刺激統制や確率操作といった行動の生起条件に介入する手法に通ずると感じました。信号系に関する理論は、臨床の様々な場面で応用できそうだと気付いたことが、このセッションに参加した収穫です。
複数の理論を学び、実践に役立てることが自分のテーマですので、今後も一見相容れないと見える緒理論に共通することや、相補的に使える部分に関心を向けながら学び続けたいと考えています。