対人援助を考える。

対人援助の仕事を通じて考えたことの備忘録です。

グループワークにおけるリーダーとコリーダー

 先日,職場の同僚との会話の中で,グループワークのリーダーとコリーダーの在り方について考える機会がありました。

 その同僚とは,少し前まで自分がリーダー,向こうがコリーダーという分担で数か月協働しました。現在,同僚は他の人と組んでグループをやっているのですが,コリーダーである自分が出過ぎてしまっているのではないか,と折に触れて話します。リーダーは懐が深い人なので,コリーダーの動きに腹を立てたりするようなことはなく,むしろコリーダーの知識や経験に助けられていると言っていますが,コリーダーを務めている同僚は,自分の動きに疑問を抱いているようです。以下は,その同僚と話し合った内容です。

 リーダーとコリーダーの役割分担とは何なのでしょうか。自分が習った一例としては,リーダーがコンテンツを進め,コリーダーがグループプロセスを見る,というものです。関与が不十分な人に働き掛けたり,共通項を持つ人同士を繋ぐ,といった仕事です。実際には,リーダーもグループプロセスを気に留めるし,コリーダーは,リーダーの説明が不十分な場合などには,補足説明もするので,両者の役割をクリアに分けることはできません。同僚が気にしていたのは,本来リーダーに任せるべきところを自分が出しゃばっているのではないかということでした。なぜ前に出てしまうのかを尋ねると,今までの経験から,「この場面では,この介入が必要。」という思いがあったそうで,私からすると,それはそれでコリーダーが感じたままに動いており良いのではないか,という感想を伝えたのですが,同僚は,リーダーへの申し訳なさを感じたとのことでした。申し訳なさの背景を探ると,セッションを意味あるものにしたいという思いが見えてきました。私は,「大切な部分で,自分も同じ思いを持っています。一方,その日のセッションを良いものにしようとする努力は重要であるものの,セッションの円滑な進行自体は,我々の目的ではなく手段です。グループあるいはメンバー個々の目的達成のために,グループセッションという手段を用いていると思います。どんなに準備をしても,セッションがうまく行かないことはあり得るし,そうなったら,それが何を意味しているのかを考え,グループの目的達成のために活かせばいい。うまく行かない可能性を排除しようとするのではなく,起こり得るものとして想定しておくことは,グループを運営したり,クライアントを支援する上で,とても大切なことと思います。」と伝えました。こう考えておくと,自分の動きに過度な罪悪感を持たずに済むし,ゆとりも生まれるように思います。

 「AGPA集団精神療法実践ガイドライン」に書かれているセラピストの介入の4機能(運営機能,思いやり,情緒的刺激,意味帰属)をリーダーとコリーダーが協働して発揮できているかということが大切だと思います。難しいですが,やり応えのある挑戦です。業務の中で行うグループもあるし,1~2月には,講師依頼を4つ受けています。単に知識の伝達に終わるのではなく,相互作用が活発になり,深まる時間を作りだせるよう,コリーダーやメンバーと協働したいと思います。

 

AGPA集団精神療法実践ガイドライン

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