対人援助を考える。

対人援助の仕事を通じて考えたことの備忘録です。

クライアントの感情への応答について

昨日は,1年くらい前から依頼されていた研修会を行いました。学会のプログラムの1つで,最終的な参加者は100名を超えました。普段から共に学んでいる仲間が応援に駆けつけてくれ,滞りなく済ませることができました。

相手の発言,例えば「こんな面倒なことはやりたくない。」といった発言に対し,「一方的に押し付けられた感じで不満を感じているのですね。」と感情を返すことを例示しましたが,それに対し,「不満なのですか?」と質問した方が良いのでは,という意見がフロアから出ました。「不満なのですね。」は決めつけているような感じではないかという疑問です。非常に難しいところだと感じました。教科書的に答えると,質問よりも語尾を下げて聞き返す方が相手が考えやすい,とか,もし不満ではないなら,「不満というか,〇〇で・・・」のように説明をしてくれる,つまり,会話に弾みをつけてくれるのだ,ということになるのでしょうが,そういうことではないなと感じました。経験上,「不満なのですね。」と返すことで,抵抗が起こったり,カウンセリングの展開が滞ったことはないので,それを言おうとも思いましたが,それでは質問者の疑問に答えることにはならなさそうです。結局,「確かに微妙なところであり,そういった疑問を抱くこと自体がクライアントに対するより良い支援を考えている証左ですね。」みたいな曖昧な答えになってしまいました。今思うのは,エクササイズでクライアント体験を重ねることで,感覚的に理解してもらうことが一番良いのだろうということです。実際に私が答えた内容の後に,「教科書的には〇〇ということになります。一方で,一番大切なのは体験的理解だと思います。WSや勉強会への参加を積み重ね,『~ですね』と言われた時の感覚に注意を向けてみることをお勧めします。」みたいな感じが良かったのかもしれないと思いました。教科書的な知識を伝達しつつ,受講者の選択権を保障し,なおかつ,継続学習を促すことができたのかもしれません。まあ,カウンセリングと同じで,正解はないのだと思いますが,こうやって振り返ること自体は大切なことです。

次は,今月下旬に1日WS,10月にアディクション関係の学会での講義があります。今回の大舞台から得たことを活かし,より良いものを提供できるようにしたいと思います。それが支援者を元気づけることになり,ひいては,自分は会うことがない多くのクライアントのためにもなります。以前は,支援者に教える立場になることに対し,「こうやって講師で呼ばれると,現場にいる時間が減ってしまう。より良い支援のために学んできたのに,現場にいる時間が減るなんて,本末転倒なのではないか。」と考えることも多かったのですが,最近は,そこからは脱してきたように感じています。