対人援助を考える。

対人援助の仕事を通じて考えたことの備忘録です。

クライアントにとっての外圧と一体化しないこと

 最近,業務の中で,それまでは対象ではなかった方々と関わるようになりました。集団への参加を強く拒み,孤立している方々です。そういった方々に個別に働き掛け,同じ立場の数名で構成するグループへの参加を促しています。最初は完全拒否だった方も,関係性ができるにつれて,少しずつ思いを話してくれるようになります。

 とはいえ,そう簡単ではありません。それぞれの事情や考えがあって,ある意味,外圧に屈することなく,一人で生活している方々なので,私がその外圧と一体になるようでは,結果は目に見えています。こういう時は,外圧とその人の間に立って,両者の間にある葛藤を協働作業で解決する,という立ち位置が一番です。「~しろという圧力はあるし,あなたは,今はそうはしたくないと思っている。この問題をどうしていくのか,一緒に考えませんか。」という感じです。そうやって協働作業ができるようになるのですが,そこから先に進むことは容易ではありません。集団に参加することのメリットとデメリットを比較すると,どう考えてもデメリットの方が大きいという結論になってしまうのです。もちろん,得失を等分に検討すると,両価性は解消されないので,そこは色々な戦略を使いながら進めているわけですが,同じ立場の数名で構成するグループへの参加までは漕ぎつけることができても,そこから先は難しい。

 ただし,彼らに他の人と同じ生活を求めることが良いのかどうかは冷静に考えたいところです。無理に促すと,それこそ彼らが戦っている外圧と同じことになってしまうからです。目に見える結果,周囲が私に求める結果を追い求め始めた時は,「そもそも,これは何のためにやっている?」と目的がぶれないようにしなくてはならないと思います。しかし,彼らが戦っている外圧と一体化しないことが大事である一方,彼らが今の状況から脱することができることには,当然メリットがあります。そのメリットは,彼らには見えていません。外から言われ,頭では分かっているのでしょうが,直視はしません。私のやるべきことは,それを直視した上で,最終的な行動を選択してもらうことなのでしょう。彼らにとっての外圧と一体化するのもダメだし,彼らの立場に寄り添うだけでもダメ。その間で,うまくバランスを取りながら,自己決定を促す。非常に難しい課題ですが,難しいからこそ,やりがいもあるのだと思っています。